北欧の幸せな社会のつくり方
10代からの政治と選挙
著 者 | あぶみ あさき |
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ISBN | 978-4-7803-1090-0 C0036 |
判 型 | A5判 |
ページ数 | 138頁 |
発行年月日 | 2020年05月 |
価 格 | 定価(本体価格1,800円+税) |
ジャンル |
18歳選挙権が導入された日本の、これからの政治のあり方の道標にしたい北欧ドキュメンタリー。
選挙になると選挙小屋が建ちコーヒーや文具が無料配布され、十代の政治参加が歓迎される北欧。写真とともに北欧民主主義を読み解く。
150点以上の写真とともに、ノルウェー、フィンランド、スウェーデン、デンマークの選挙の様子、各政党の青年部の活動、小学生から高校生までのシティズンシップ教育、大学での選挙活動などをレポート。
そこから見えたのは、自由で楽しい政治と、議論のなかで認めあい信頼しあう市民の姿、若者の政治参加を促進し、声を聞こうと努力するおとなたちの姿だった。
第1章◉選挙はお祭り! 楽しい北欧流選挙
第2章◉若者と民主主義
第3章◉未来を担う若者たち
第4章◉日常にあふれる政治
投稿者:女性・50歳代・会社員
評価:☆☆☆☆☆
多くの取材からでないと作れない内容と、現地のわかりやすい写真が多く、とても読みやすかった。日本と照らし合わせながら、小学生から大人まで参考に出来る本でした。若い頃に出逢いたかったです!
『北欧の幸せな社会のつくり方 10代からの政治と選挙』刊行にあたり
2019年、フィンランドで誕生した新しい女性首相に注目が集まった。サンマ・マリン首相、34歳。フィンランド史上最年少の首相だ。
#ME TOOなどフェミニズム運動の盛り上がりもあり、若い女性首相の誕生に日本のマスコミも注目した。フィンランド大使館にはたくさんの取材の申し入れがあったそうだ。その中でとくに多かった質問が、「フィンランドの若い人は、なぜ政治に興味をもち、積極的に関わる、関わりたいと思うのか」だったそうだ。
フィンランドに限らず、北欧の投票率の高さはよく知られている。国政選挙では軒並み80%台の投票率だ。各国は早くから18歳選挙権を導入していて、義務教育での主権者教育が充実していることを知る人も多いと思う。
そうした教育が、実際にどのように実社会のなかに顕れ、社会に影響しているのか──それをレポートしたのが、『北欧の幸せな社会のつくり方 10代からの政治と選挙』だ。
本書は、ノルウェー在住の日本人ジャーナリストあぶみあさきさんによる150点以上のカラー写真によるレポートになっている。
たとえば選挙中、北欧の国々では「選挙小屋」とも呼ばれる政党のスタンドが立ち並ぶ。党員はそこで文具や食べ物などを道行く人達に無料で配布しながら、政治についておしゃべりするきっかけを作る。日本の厳しい選挙法では考えられないことだが、「無料グッズくらいで私の大切な1票は買えない」というのが、北欧の人々の考え方だ。
また、高校ではまだ投票権のない学生も含めた「模擬選挙」が行われる。模擬選挙中、校内には選挙スタンドが立ち、10代の党員が若者にも興味がそそるように工夫しながら政治を語る。
こうした選挙の風景は、人々が「民主的であること」「民主主義を実行すること」を大切に考えていることで実現している。民主的とは、だれもが政治に決定権をもち、議論に参加することが保障されている状態のことだ。投票権がある人だけではなく、子どもや移民など社会を構成するすべての人が参加することこそ、民主的だと考えられている。
2019年のノーベル平和賞候補になった環境活動家のグレタさんもそうした価値観のなかで生まれた。彼女の怒りをあらわにする姿を「発達障害だから」と報じる向きが日本にはあるが、著者は決してそうではなく、子どもも政治参加することが普通である北欧では、当たり前の光景だと言う。
子どもの声に大人たちが必死で耳を傾け、尊重する姿勢が、グレタさんのような子どもたちを育てている。また、社会を変えられる、という自信は、国民の自己肯定感をも育てている、と著者は述べる。
振り返っていまの日本では、政治的な発言へのバッシングや冷笑がはびこっている。こうした空気が政治について語ることを控えさせ、民主主義を遠ざけている。
ぜひ、本書から本来の民主主義のあり方を吸収し、今の日本をどう変えていかなければならないか、考えてみてほしい。民主主義や政治とは、本来「楽しく」て「面白い」ものなのだ。ぜひお読みください。
あぶみ あさき
ノルウェーの首都オスロを拠点に北欧情報を発信。ノルウェー国際報道協会 理事会役員。産業推進機関イノベーション・ノルウェーから「国を日本に広めた優秀な大使」として表彰される。