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『営業より

女がひとりで

3月に刊行された『女がひとりで』はイスラエル人女性である著者が、30年間にわたりパレスチナに通い続け交流した足跡を描いたエッセイです。
 
検問所でのやりとりや労働許可証をめぐる不正、少年や労働者の不当な拘束、囚人との面会、パレスチナの子どもたちとの海水浴といった場面を、自身の体験を通して具体的に描き出しています。
 
パレスチナでのこうした不正義を告発する書籍はこれまでも数多く出版されてきました。本書は、一市民であるイスラエル人がそれにどう向き合い、和平を構築するためにどう行動したのかが描かれています。そこには、声高に政治的な主張をする姿があるわけではなく、たとえば労働者をイスラエルに運ぶ手伝いをしたり、パレスチナの子どもを海に連れて行ってあげたり、ささやかな誰にでもできる行いが描かれます。その行いには、「占領地を見ることの責任」や「目を背けないことの意味」があり、イスラエル社会における無関心や他者への隔たりに対する強い違和感への挑戦になっています。
 
本書は、パレスチナ問題に限らず、たとえば日本における政治への無関心など、あらゆることに通じる共通の課題について考えさせられる内容になっています。また、加害した側がその気まずさを引き受けつつ、どのように和平をつくるのか、日本人にも共通する感情が見られます。
 
残念ながら彼女の努力は実らず、和平どころか中東情勢はますます混迷を極めています。
 
それでも、私たちは諦めずに「見る責任」を負い続けなければならないと、本書は訴えているように思います。