気候危機と人文学
人々の未来のために
奈良女子大学文学部〈まほろば〉叢書
編著者 | 西谷地 晴美 |
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ISBN | 978-4-7803-1086-3 C0010 |
判 型・ | A5判 |
ページ数 | 180頁 |
発行年月日 | 2020年03月 |
価 格 | 定価(本体価格1,800円+税) |
ジャンル |
人文学はいま何をすべきか
地球温暖化が加速し、新たな地質年代「人新世」を迎えた今、7000年続いた安定した気候が終わろうとしています。気温上昇が止められなくなる転換点が目前に迫っている、とする最新の研究結果を紹介し、様々な分野の人文学者が自然を未来につなぐための課題を論じます。
はじめに
I 総論人新世と地球温暖化
第1章気候変動研究をめぐる歴史
1更新世・完新世の気候
2地球温暖化と気候研究をめぐる歴史
第2章ジェイムズ・ハンセン『地球温暖化との闘い』を読む
1最悪の出版時期
2地球温暖化Q&A
第3章人新世と気候の転換点
1ティッピングポイントと不可逆性
2論文「人新世における地球システムの道筋」を読む
第4章オイディプスの杖と未来の人文学
1工学的存在としての人間およびその病
2人間の三度の変身について
3王はテクノロジーを死蔵すべく誕生した
4精神の技術
II 各論人文学と自然
第5章萬葉後期の自然観照──情調の表現をめぐって
1梅花歌の序
2方法としての擬人化
3とりあわせ──梅花と鶯
4関係性の把握1鶯の恋
5関係性の把握2梅花の恋
6主客の反転
7仮構
第6章言霊と直毘霊──近代日本の自然概念
1自然概念の難解さ
2道──近世社会の最終審級
3自然概念の発生と展開
4純文学者の自然概念
5言霊と直毘霊
第7章溶融する自然と社会──インドの大気汚染を事例に
1地理学と環境問題
2インドの大気汚染とその原因
3「緑の革命」の終焉
4連鎖する環境と社会
5自然と社会の新たな関係構築をめざして
6地球環境問題の時代
第8章「内なる自然」に再び向き合う
1How dare you!
2自由と魔術、そして、産業革命
3「人新世」と人文学へのフェミニズムによる批判
4魔術としての近代産業技術
5欲望のコントロール
6「内なる自然」に再び向き合う
おわりに 気候危機と人文学
1完新世から人新世初期へ
2人新世における人文学の条件
地球温暖化をめぐる研究が進み、気温上昇とその影響に関する予測は深刻化しています。このままでは、あと10数年の単位で「気候の転換点」を迎え、「熱い地球」へと逆戻りのできない道を突き進むことになる、という警鐘は衝撃的です。温暖化を緊迫した身近な問題として考えるきっかけになる1冊です。
西谷地 晴美
奈良女子大学研究院人文科学系教授。専門は日本中世史、環境歴史学。