『営業より』
地球温暖化に起因する異常気象、拡大する経済活動に伴う環境汚染…。国連によるSDGs目標や温室効果ガス排出量の規制など、地球環境にようやく目が向けられ始めていますが、いまだ抜本的解決の道が見えない現状において、未来でその被害を引き受けるのはいまの子どもたちです。
11月初旬に弊社より刊行される『山里の生活実験 サステナブルな暮らしを見つける』の著者である丸山啓史さんは、京都教育大学准教授の職にあり、子どもの権利条約市民・NGOの会の共同代表も務めており、子どもたちの未来を明るいものにするために何かしなくては、という思いを人一倍強く抱いています。
そこで著者は、持続可能な暮らしとはどのようなものか、真剣に考えるようになりました。それも一人山で世捨て人のように暮らすというのではなく、職業をもち、子どもを含めた家族が営む暮らしとして。そして京都の大原の山里に移住して実際にそれを試してみることにしました。本書はその生活の様子、考えたことなどをまとめたものです。
本書は大きく2部に分かれています。
第1部では、山里に暮らすようになってからの様子が綴られています。
テレビ、冷蔵庫、洗濯機を含む多くの電化製品と決別し、薪を使い、ニワトリを飼い、畑を耕す。サステナブルな暮らしをするためにどれだけのものをそぎ落とせるか、その結果暮らしがどのようになったのか、まさに生活実験と呼ぶにふさわしい内容になっています。
第2部は、なぜこうした生活実験をおこなっているのかについての解説と持続可能な社会の実現に向けた考察です。ただ自然に囲まれてのんびり暮らしたいから田舎に移住するというわけではない、研究者らしいロジカルで明確な動機がその生活のベースになっていることがよくわかります。
とはいえストイックなだけの内容ではありません。その中には確かな喜びや地域住民との交流などがあり、里山暮らしに憧れる人にも楽しく読んでいただける内容になっています。
また、いまの世界の状況に危機感をおぼえ、持続可能な生活をどう実現していけばいいのか、と考えている人に解決の糸口を提示する内容にもなっています。
現代においては、どこまで突き詰めても自給自足の暮らしは不可能です。畑を耕す鍬も薪をつくる鉈も車の代わりとなる自転車も自分ひとりで作ることはできません。出来る事と出来ない事、その境目で逡巡しながら構築する生活は、結局は昔ながらの懐かしい暮らしとシンクロしていくのだ、ということが本書を読むと見えてきます。著者はそれを「懐かしく新しい未来」と言います。
あとがきの最後で著者はこう言っています。
『真に持続可能な「懐かしい未来」に向けて、同志が増え、同志の交流が広がることを願っています。』 同志になられる方いらっしゃいませんか?
なお12月8日には、京都の京エコロジーセンターにて、本書刊行記念イベントとして著者と紀南の山里で農園を営みつつサステナブルな生活を実践している春原麻子さんによるトークセッションがございます。オンラインでの参加も可能なので、ご興味のある方は、詳細をご参照ください。