『営業より』
2017年、戦後日本の食料安全保障を約70年にわたり陰で支えてきた「主要農作物種子法(種子法)」が、国会でのわずか10時間ほどの審議で廃止されました。米や麦、大豆といった公共の種子を安価かつ安定的に農家へ届ける仕組みを失うことは、日本の農業や食料の危機に直結する深刻な事態です。
2019年5月、種子法廃止に対し、農家や消費者など全国約1,500名が原告となって国を相手取り、種子法廃止の違憲確認や国家賠償などを求めて訴訟を起こしました。2019年11月に刊行された『消された「種子法」』では、この訴訟における原告の訴えをまとめています。
今回ご紹介するのは、7年の歳月を経て高裁まで争われたこの裁判をまとめた書籍『コメを守りぬく』です。(2026年10月刊行)
本書は、この「種子法廃止」という暴挙に対し、元農林水産大臣の山田正彦氏をはじめ、弁護士、研究者、そして全国の農家や市民たちが立ち上がり、7年間にわたって繰り広げた法廷闘争と市民運動の全貌を克明に記録したドキュメントです。
「TPPの影」「外圧と規制改革推進会議によるトップダウンの法解釈」「法判決を揺るがした民間種子『みつひかり』の不正・刑事処分問題」など、報道の裏側で進行していた驚愕の事実が次々と明かされます。さらに本書では、憲法で保障されるべき「食料への権利」や「自然権的生存権」といった最新の法理論を展開し、なぜ食の根幹を守ることが基本的人権に直結するのかを論理的に解き明かします。
裁判自体は最高裁が上告を棄却して幕を閉じました。しかし、この闘いは決して「敗北」では終わりません。彼らの運動は全国35の道県における「種子条例」制定へと結実し、公的種子を守る仕組みを各地に存続させるという成果を生み出したのです。
食料自給率の低下や米の価格高騰が社会問題となる今、「食べる」という生命の根幹を誰がどう守るべきなのか。農業関係者や法曹関係者のみならず、日本の「食の未来」に関心を持つすべての生活者・消費者に捧げる、希望と抵抗のドキュメントです。


