原爆にも部落差別にも負けなかった人びと
広島・小さな町の戦後史
著 者 | 大塚 茂樹 |
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ISBN | 978-4-7803-0832-7 C0036 |
判 型・ | 四六判 |
ページ数 | 360頁 |
発行年月日 | 2016年06月 |
価 格 | 定価(本体価格2,500円+税) |
ジャンル |
川が息づいている都市・広島。そのなかに、食肉・製靴・皮革などをなりわいとする小さなまちがあった。
部落解放を求めてきたこのまちも、七一年前に投下された原子爆弾による甚大な被害を受けることとなる。このまちの人びとは、被爆の苦しみと部落差別からの解放を、より良きまちづくりのなかでめざしていく。明治生まれの福島町一致協会以来の歴史を受けつぎ、戦後をひたむきに生きてきた地域内外六十数名の声を聞き取り、たしかな民主主義のあゆみを描いた労作。
第一章 川に挟まれたひょうたん状の町
第二章 貧しさと差別からの解放を求めて-中西ハルエと仲間たち
第三章 野戦病院のような診療所
第四章 部落が変わりゆく日々に
1 子ども会活動を出発点にして
2 キリスト教社会館が誕生した頃
3 地域の仕事を支えた人たち
4 親から受けつぎ、自らをつくる
第五章 被爆者として生きて
第六章 差別を乗り越え、地域を変えるために-人間の苦しみに寄りそって
1 教師たちはどう向き合ったのか
2 地域で教育と文化を育む力
3 人間の尊厳を問い続けて
4 変貌した町を見つめる
5 宗教者として問い続ける
部落問題と原爆という20世紀に解決すべきだった課題に、広島の小さな町の人びとはどのように取り組んできたのか。自立と民主主義を実現する名もなき人びとのいとなみ。
投稿者:男性・56歳・会社員
評価:☆☆☆☆
無名の多彩な人々の織りなす物語は、過酷で重い。しかし、現在から未来に向かってまっすぐにじぐざぐに展望が開かれてゆく。著者の著作は20数年前の『ある歓喜の歌』以来の巡り合わせであった。小松裕一郎という希有な活動家を中心に描かれた同書に目を瞑ったが、その筆力は本書においても遺憾なく発揮され感動を新たにした。
大塚 茂樹
ノンフィクション作家。元岩波書店編集者。