都民とともに問う、都立病院の「民営化」
ねらわれる地方独立行政法人化
著 者 | 安達 智則・太田 正・川上 哲 |
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ISBN | 978-4-7803-1015-3 C0036 |
判 型 | A5判 |
ページ数 | 136頁 |
発行年月日 | 2019年03月 |
価 格 | 定価(本体価格1,500円+税) |
ジャンル |
ねらわれる地方独立行政法人化
今、都民と患者の願いに背を向けて、都立病院が地方独立法人化されようとしています。これは、医療費の抑制と儲かる医療への転換を狙いとして、全国的に進む病院や病床の再編・統廃合の一環であり、実質的な「民営化」といえます。
本書では、行政・財政・経営の各側面からの総合的な分析にもとづき、地方独立行政法人化の「不都合な真実」を明らかにするとともに、東京都が運営に責任を負う公営の都立病院だからこそ実現できる福祉医療行政を展望します。
Q&Aで、この本のキーワードになるテーマを取り上げ、用語解説付。
序文 進む医療崩壊、自治体は住民の生命を守る最前線
Q&A 9問
第1章 都民の期待に近づいていく“都立病院行政改革”
1. 都立病院の現状と課題
(1)都立病院を見てみよう
(2)都民への透明性は、東京都は都道府県内で最下位
(3)なぜ、30日の参加時間を保障しないのか
(4)「 都職員はパブコメができない」という意図的な思想統制とその克服
(5)都立病院を守る運動の中で“パブリックコメント改革”を実現
(6)パブリックコメントの都民意見…地方独法化賛成ゼロ
2. 1990年代“都立病院改革”の検証
(1)1990年代の転機―都立病院の理念は「光」を放つ
(2)なぜ「自己収支比率」を使うようになったのか、出発点を検証する
3. 2000年代“都立病院改革”は、財政危機と併走―「行政的医療」による都立病院縮小
(1)石原都政による医療政策の後退
(2)“都財政危機”説から生まれた「行政的医療」
4.「行政的医療」から「福祉行政医療」へ
(1)都立病院を縮小させていく「行政的医療」
(2)充実した都立病院をめざして…福祉医療行政を都立病院で
(3)都立病院行政欠陥の解決は直営維持が必須条件
第2章 都立病院の地方独立行政法人化は何をもたらすか
1. 病院事業の経営形態と地方独立行政法人
(1)東京都における多様な経営形態と事業方式
(2)地方公営企業としての病院事業
(3)地方独立行政法人制度の概要と本質
2. 地独法化の現実と地独法病院の実像
(1)地独法化により実際に起きた職場等の実態
(2)比較経営分析による地独法病院の実像
(3)直営に関する「制度的な制約」の虚構
3. 直営を活かした都民本位の医療をめざして
(1)マンパワーにより成り立つ病院事業の特質
(2)「事例集」に見る経営改善のシナリオ
(3)職場・労働環境の整備と職員の経営参加
(4)直営体制の下での柔軟な運用と都立病院の充実
第3章 都民のための都立病院財政の確立、そしてさらなる拡充へ
1.東京都財政と都立病院財政―分けて考えることはできない
(1)都立病院財政は基本的に公営企業会計で管理されている
(2)都立病院の財政規模―都立病院財政だけを見るのは「木を見て森を見ず」
(3)一般会計からの繰入金とは何か
2.「繰入金400億円」はなぜ問題なのか?
(1)「繰入金400億円」問題とは何か?
(2)一般会計からの繰入金の詳細を探る
(3)都立病院における繰入金―東京都の独自判断の繰入金は400億円ではない
3.都立病院財政分析の基礎
(1)「 病院決算カード」とは何か―病院の基礎データを見ることができる
(2)都立病院の収益と費用―どこから収入を得て何に使っているのか
(3)都立病院財政分析のための指標―「経常収支比率」と「医業収支比率」
4. 独り歩きする「自己収支比率」―公立病院分析の一般的な指標ではない!
(1)「自己収支比率」とは一体何なのか?
(2)『新プラン』における「自己収支比率」の使われ方
(3)「自己収支比率」を使用する狙いは何か
(4)「自己収支比率」は使ってはいけない指標
5.地方独立行政法人では都立病院の役割は果たせない
安達 智明
東京自治問題研究所主任研究員、都留文科大学講師、健和会医療福祉調査室室
太田 正
作新学院大学名誉教授、とちぎ地域・自治研究所理事長
川上 哲
東京自治問題研究所主任研究員、都留文科大学講師